市進ホールディングス

コラム

column
 
2018.09.01

私の教え方の転換期

私が今の会社(教育サービス企業)に入社した頃の研修は大変厳しいもので、人前に立って教える以上、どんな授業であっても原則、テキストは自分の手に持たず全て頭の中に叩き込んでから模擬授業に臨まなければなりませんでした。
数学であれば板書計画から発問構想、国語においては長文の該当段落は全て暗記した上でないと模擬授業をさせてもらえないという徹底ぶりでした。

それから9年後、今度は自分が研修トレーナーとして講師の卵を育成する立場になりました。かねてから配属を希望していた部署ということもあって、当時の私の仕事に対するモチベーションは相当高いものがありました。
会社の財産である講師を育成することへの使命感、この仕事へのやりがい、そして何より、自分が体験してきた全てのものを後進に伝えなければという熱い思いを持って日々指導にあたっていました。今から13年も前の話です。

ところが後進の指導において、私が熱量を持って話せば話すほど、教えれば教えるほど、新人たちの顔からは笑みが消え、彼らによって展開される授業は私が期待するところからは程遠い、とてもつまらない画一的な授業になっていきました。
それから徐々に、淡々としたつまらない授業が私の目の前で展開されることが多くなり、それと比例して私の口調も荒くなっていき、やがては退職を申し出る者も出てきました。

「何かが違う」「こんなはずじゃない」そんな悩みを抱えていた2005年頃に、私はコーチングと出会いました。自分が入社時に受けた研修が全てと思い込んでいた私にとっては、考えさせる授業の根底にある「問い」というものを真剣に考えさせるコーチングは、講師育成にとても役立ちました。そして、コーチングはご存知のとおり、授業スキルだけではなく、人材育成にも活用されるようになり、社員の主体的な行動を促進する有効なマネジメントスキルとして定着していきました。
何よりこの頃から講師の退職も減り、その講師の講義を受ける生徒や保護者からも感謝の言葉を受けることが多くなってきたのが大きな変化だったように思えます。

もちろん、コーチングが全てではありません。ただし、昔の指導が必ずしも良いものとは限らないということを私に教えてくれたのもコーチングでした。コーチングは、視野が狭くなったときに、新たな視点を持ち込み、指導される側にも、指導する側にも大きな気づきを与えてくれる組織活性化のツールでもあります。
なりたての管理職が、自分の内側に宿る過去に受けたマネジメントを再現する傾向にあるというのは、誰もが通る道でもあり、そこから何を得るかというところが大きいように思えます。
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