市進ホールディングス

コラム

column
 
2021.03.01

社内講師の教え方を検証する2つの視点

人前に立って教える時、塾予備校の世界には教える際のいくつかの工夫があります。
その工夫を私たちがスキル化するときに実践する手法が、満足度の低い講義の該当箇所の抽出と原因の特定、
そこから具体案をもとに改善手法を検討し、学習効果を測定した後に汎用化するという手順です。

そしてこの改善手法の中で私たちが特に大切にしているのが、その講師のキャラクター(個性や経験など)で
講義レベルを判断しないという点と、「一見、上手そうに見えて実は大きな問題を含んでいる指導」に着目するという点です。

この「一見、上手そうに見えて実は大きな問題を含んでいる指導」というのは、その人の個性を否定しているのではありません。
その指導の「方法論」が受講者の学習効果に良い影響を与えないだけでなく、講師にとっては良かれと思って展開している点に
問題があるということを意味します。

例えば、生徒を置いてけぼりにしないためによくある例が、最初に誰でも理解できる当たり前の知識や問題から入り、
全員ができたという状態を作り褒めてから次の手順を丁寧に説明、そして確認するというこの繰り返しの展開です。
たまにその流れについてこられない生徒がいると、講師は集団授業でありながらも他の生徒の面前で
「何がわからないか」を無意識に問い詰め、ますますわからなくするという悪循環の授業です。

この展開には教え方における問題点が大きく2つあります。1つは講師が「その場で全員を」且つ「内容全てを」
理解させないといけないという先入観です。
もう1つが講師が教えようとしている内容にはたくさんの学び方があるにもかかわらず、
ある特定のしかも非効率な積み上げ型の展開になっているという点です。

特に2点目の積み上げ型の講義は、講師が良かれと思って意図的に実施している場合がありますが、
学ぶ側からすると敷かれた線路の上をただ従うだけの学習になります。
もちろん、操作説明ややり方が単一のもの、短い時間で少人数に対して導入部分の講義などの
チュートリアル的な要素であれば問題ありません。

一方で、講義時間や学習期間が長く、ゴールまでの知識やスキルや態度の習得方法が
複数ある講義であるならば、そこには講師主導の敷いたレールの上をなぞらせるのではなく、まずは講師はゴールを示し、
そのゴールに向かって学び手に考えさせ、レールさえも選択させるということが重要になります。

このゴールを示すことを私たちは講義展開において方針呈示と言っています。「何がわかれば、答えにたどり着くか」
というゴールを全体で共有することが、積み上げ式にならない講義手法の肝となります。

教えるスキルというものの中にも「学習者を主体的に考えさせる要素があるかどうか」という視点は、
一見、上手そうに見える講義の中にこそ、検証の余地が大いにあると私たちは考えます。
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