2025.07.22
社内講師の問う力
細谷です。現在定期的に社内講師養成をテーマにしたオンラインサロンを開催しています。参加者は社内教育に携わる方や人材開発担当の方など、業界も年齢もキャリアも様々で、「人に教える」「人や組織の学びを促進する」ことに興味を持った方々が集まる場になっています。
この会では毎回ファシリテーターを交代しながら皆が関心のあるテーマでワークや対話をおこない、参加者同士の情報交流とファシリスキル向上を図っています。先月は私がファシリテーターになり、久々にテストフォーミュレーションのワークショップを実施しました。
テストフォーミュレーションは、「問いづくり」のワークショップのひとつで、主に学習後に受講者自らがテストを作り、それらを受講者同士で共有しながら理解を深める一連のプロセスのことをいいます。
今回は、「大人がわくわくする研修プログラム」というテーマで、様々な視点から参加者に「問い」を作ってもらいました。
「大人と子どものわくわくにどんな違いがありますか?」
「研修の中にあるわくわくの正体は何ですか?」
「なぜ今の研修では、わくわくしないのですか?」
「わくわくと学びはどのような関係性ですか?」
「わくわくの研修の本質は何ですか?」
これらの問いは、テーマの中にもある「わくわく」や「大人の学び」「研修」といったワードが散りばめられていて、どれも探究的かつ興味深い問いだったわけですが、一方で、参加者の一人からは、全く異なる観点で出された問いがありました。それは・・・
「クツを作ってください」
そもそも「クツを作ってください」というのは問いでもなければ、「大人がわくわくする研修プログラム」というテーマから大きくかけ離れているようにも見えます。見る人によっては、奇をてらった単なる思いつきのアイデアに映るかもしれません。
しかし、たくさんあがった問いの中で、参加者に最も好評だったのが、この「クツを作ってください」という問い(出題)でした。
その出題真意を作成者に尋ねたところ、アート思考的な観点でおっしゃっており、ここでは詳細を割愛しますが、ただ今回の「大人がわくわくする研修プログラム」という文脈の中で、この「クツを作ってください」という出題は、とても直感的で、問われた側の思考が揺さぶられるものでした。またそれは、「わくわく」や「研修」という直接的なワードに縛られずに「わくわく」を感覚的に想起させる、ある意味、挑戦的な問い(出題)と私は感じました。
そしてその後、「クツを作ってください」という出題で、今回のテーマに適う回答を求めたところ、
「ものづくりを通して、自分の価値観を深堀りするプログラム」
「価値観をデザインで表現するプログラム」
「個性を出して自己理解・他者理解を深めるプログラム」
「未知・初めての体験から見える、新しい世界を発見するプログラム」
「あなたの仕事にとっての「クツ」を考え、使いたい「クツ」を生み出すプログラム」
「履き潰せない学びのプログラム」
といった、興味深いアウトプットが抽出されました。
その後の振り返りでは、テストフォーミュレーションの問いづくりが、単にプレイフルやクリエイティブを目的に据えないほうがよいといった意見や、「思わず探究してみたくなる問い」には、共通項があるなどのコメントもありました。
そして会の最後に、参加者のコメントで、
「問うことは問われることである」
という感想があり、自分で生み出した問いが、自分の思考を曝け(さらけ)出すという気づきに繋がったようです。このことは、問いを通じて自らの思考を客観視できると同時に、問う力をもう一段アップさせる良質な考え方と言えるでしょう。
今回のワークショップのテーマだった「大人がわくわくする研修プログラム」の根底にあるのは、相手への学びの促進としたときに、そこには教える側の問いの鍛錬、「問う力」が求められているように思います。