市進ホールディングス

コラム

column
 
2022.08.29

大学院に通って思うこと

今年の4月から実務家教員課程というコース履修のため都内にある大学院に通っています。
このコースは実務経験が主に5年以上ある社会人を対象に、その経験やキャリアを学問の
領域までまとめあげ、将来、大学で学生に教えたいという社会人が学ぶ課程になります。

私は週一回3時間、オンラインとスクーリングの併用で受講していますが、10期生
の私の同期は全国に50名以上在籍しています。受講者の年齢層は30代から
70代まで幅広いですが、50代以上が多いように感じています。

学ぶ内容は、実務家教員が求められる背景から始まり、自分のキャリアの棚卸し、
研究の手法、論文作成の視点、教授方略など幅広く、中でも学生に提供する
15回分のシラバス作りには皆さん苦労されているようです。

シラバス作りは単に自分の経験や専門領域を講義プランにするだけでなく、
学生が学問として学ぶためにどうするかといった観点で、主語を学生にしながら
ディプロマポリシーとカリキュラムポリシーに則って組み立てる必要があります。

ディプロマポリシーとは学修によって得られる成果物、カリキュラムポリシーとは
その成果物を得るための方針を表しますが、この考え方は企業内教育の設計
にも十分適用できる考え方です。

大学では入口の段階でどんな学生に入学してきてほしいかというアドミッション
ポリシーと、出口の段階でどんな能力が身につくのかを約束するディプロマポリシー
が明確に提示されています。

企業内教育においても、これからはこの入口と出口の考え方を今まで以上に
明確に示す必要があると感じていて、特に入口をもっと受講対象者に明確かつ
具体的に見せることでコース学習が管理しやすくなるとも感じています。

コロナ禍で企業内教育は、従来のイベント的な「点」の考え方からコース学習的な
「線」の学び方になり、そこから受講者自身が学び方も選択しながら知見やスキル
が有機的に繋がる「面」の学び方の要素も出てきました。

受講者自身で学びや学び方が選択できるということは、主体的・自律的な学びが
促進される一方で、学び方を学んでいない、学ぶ目的を理解していない学習者には、
今後「学習弱者」を生み出しかねない厳しい社会環境になっていくのかもしれません。

私が通う実務家教員養成課程で学ぶ多くは社会人たちは、自らの教え方を客観的に
内省しながら個々の学び方の特性に気づき、「教えるとは何か」について考える機会を
得ていると感じます。

教育提供のチャネルがこれだけ増えた時代においては、学ぶ側の学び方の取捨選択が
今後益々求められてくるはずです。一方で、教育を提供する企業側もコンテンツの大量
供給に走りすぎるのではなく、教える人材の育成・質の高い教育基盤の構築が早急に
必要になってくることでしょう。

「人前で教えることが、何よりの人材育成」

私の好きな言葉です。
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