市進ホールディングス

コラム

column
 
2023.01.30

塾の教材づくりから見えるもの

私も以前は塾の現場で小中学生に国語や社会を教えていましたが、
最近ではその当時に生徒として通っていた企業の教育担当者や管理職の方たちと
出会う機会が多くなってきました。

実際に研修の休憩中に受講生から「細谷先生ですよね?」と声をかけられたことが
何度かあり、「練馬教室に通ってた○○です。覚えてますか?」といった
元生徒との嬉しい再会もあります。

企業の教育担当者との打ち合わせの中でも、「実は昔、市進学院に通ってまして」
というやりとりはよくあって、そこから当時通っていた教室の話や
講師の話になったりします。

「必修シリーズ、懐かしいですね」

ある教育担当の方が、通っていた頃の思い出を話してくれた流れの中で、
研修の教材づくりの話題になったときのことです。

「必修シリーズ(弊社の生徒用テキスト)のような教材は、
資料と違って学ばせるための見えない仕掛けがたくさん詰まってますよね」

教育担当の方が、そうおっしゃったときには私も「なるほど」と思いました。

確かに、教材と呼ばれるものには、資料と違って「学ばせるための見えない仕掛け」が
たくさんあります。

例えば、新しいことを学ぶ際には、いきなり新規事項に入るのではなく、
既に知っている知識を使って繋がりをもたせながら新規事項に入ります。

また、わかりやすさを出すために、抽象的な解説から入るのではなく、
具体的な事例から入って一般化に繋げていく帰納的な構成を多用します。

他にも、章末には学んだことを確認するためのテストや、知識の活用を促進する
応用問題を組み込むことで理解を深める構成になっています。

これらの工夫は、生徒のような学ぶ側からはなかなか感じられないものですが、
講師のような教える側(学ばせる側)に立って初めてその機能に気づくことがあります。

印象的だったのが、かつて生徒だった方が企業の人材育成担当者になり、
社内の研修教材を作成する時に、その方が小6の受験のときに使っていたテキストを
作成のヒントにしたとおっしゃっていたことでした。

大人と子どもの学ばせる内容に違いはありますが、学ばせる方法には
たくさんの共通点があり、それは教材づくりだけはではなく、教え方、
ひいては人材育成にもつながってきます。

いまはちょうど受験の季節。

1年前は新品だった子どもたちの教科書は、毎年この時期には手垢まみれなって
おり、学習の成果を試すべく入試本番に臨みます。

このとき彼らのテキストの中には、知識やノウハウや学ばせ方だけではなく、
それ以上に大切な学びが詰まっていると感じています。
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