市進ホールディングス

コラム

column
 
2020.05.08

新入社員教育 「一斉、一定、一律」のワナ

教育の在り方が変わるとずっと言われて、随分経ちますが、今回の新型コロナウイルス感染症による影響は、あらゆる世代の教育において、変わらざるを得ない状況を生み出していると言えます。私はこれまで25年間、小学生から社会人まであらゆる世代の教育に携わってきましたが、教育の本質は変わらなくても、その提供の仕方や仕組みにおいて、この150年続いた基本形態はおよそ今後1年で大きく変わっていくと見込んでいます。

多くの企業では、来月入社する新入社員の受け入れに期待と戸惑いが交錯している時期かと思います。今、世間がこのような状況ですから、4月に入社してくる新入社員への教育が十分に提供できない可能性もあるかもしれません。

そのような中で入社してくる彼らは、企業の教育に対して期待と不安を抱いています。「自分がどう貢献できるか」「自分がどう成長できるか」「自分が本当についていけるか」そういった思いを持っていますので、育成する側としては、この期待と不安を組織の力に変えて、且つ彼らの成長実感に繋げていくための教育提供の仕方が求められてくるでしょう。

そして更に留意すべき点としては、新入社員の意識や考え方というものを事前に知っておくことで効果的な育成が可能になるということです。

今年大学を卒業する新卒者の多くは1997年生まれです。彼らは「ゆとり教育」と「脱ゆとり教育」の双方を経験している世代で、少子化と併せて教育が個別化してきた世代でもあります。一言で言えば、良くも悪くも丁寧に指導を受けてきた世代と言えます。

その上でこの世代に対し企業が教育する際は、「一斉、一定、一律」の教育がリスクになるということを知っておかなければなりません。これらは全て、数十人以上を1箇所に集めてまとめて教育をおこなう形態です。提供する側は、効率的かつ管理しやすい形態ではありますが、学習する側から見れば非効率で退屈なものになりかねません。特にこの世代はその効率性をいち早く察する世代でもあるので一層の配慮が必要です。一言で表せば、「一斉、一定、一律」に提供できるもののほとんどが映像学習で代替が可能で、その活用方法(設計・運営方法)をどうするかということです。

一方で、最近の学校教育のキーワードとなっている「主体的・対話的で深い学び」に重点をおいた教育手法(協働学習・探究学習)では、彼らの学習意欲は高くなります。現在では多くの大学でPBL型のスタイルをとっていますので、新入社員研修においてもその要素の活用は動機づけという観点で参考になると思われます。

教育の本質は変わらないけれども、それぞれの世代の特徴に合わせた教育の提供方法は、今回の大きな出来事によって、加速度的に変わっていくことは間違いありません。この機をチャンスに、デジタルとアナログの双方を採り入れ、学習効果を最大限に駆使した社員教育を考えてみてはいかがでしょうか。
一覧にもどる