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コラム

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2024.10.10

探究世代の新人教育を考える

細谷です。2014年に中教審から「主体的対話的で深い学び」を目的としたアクティブラーニングが提唱されて10年が経ちました。2020年以降は学校現場でも探究型の教育が展開されるようになり、従来の教育とは異なる教育を受けた若手社員たちは今後増えてくることでしょう。

探究学習にはいくつかの解釈があり、一つには、与えられた課題を解くだけでなく、自ら課題を導き出し、他者との対話と協働によって解決する一連の学習のことを言います。従来の「調べ学習」と似ているところもありますが、関心のあるテーマから自ら課題を見出すという点に大きな違いがあります。

この探究学習の考え方は、学校教育では当たり前のように認識されている一方で、企業の管理職の中ではあまり知られていないのが実状です。そもそも学校教育と社会人教育とは大きな差があり、「社会に出た以上は社会人としての教育に馴染むベき」という考えが根強く残っているのも要因の一つと言えます。例えば、学校教育には答えがあり、社会人教育には答えがないというステレオタイプな発想もこれに近いと言えます。

一方で、探究学習では、思考力・判断力・表現力といった社会人教育にも通じる要素があり、発達段階や環境の違いはあるものの、特に探究学習の手法に着目するならば、課題設定から仮説検証を経て解決提案までの流れはビジネスに求められるスキルと近いものがあります。

このような学校教育の変化の中で、みなさんの組織の新人教育においては、どのようなプログラムやファシリテーションが展開されているでしょうか。

多くは組織社会化に向けた「意識転換」「理念浸透」「知識・スキル習得」が中心となると思われますが、その教育手法が「探究世代」に適した設計になっているかを意識することはとても重要です。新人教育は、職場適応の最初のステップとして研修ではティーチングの要素が相対的に多くなりつつも、そのティーチングの手法がアップデートされないまま、一斉一定一律、かつ一方通行の知識伝達型の新人教育が展開されることはリスクとなりえます。

では、具体的に何から始めればよいかというところですが、まずは現在の新人研修のカリキュラムの講義箇所を抽出し、その場面を「主体的対話的で深い学び」にするための方法を検討することから始めるとよいでしょう。例えば、講師が解説する場面を講師が敢えて解説せずに、グループごとに素材だけを提供し、探究に向けた「問い」を立ててもらう設計にします。受講者はその問いに基づいてグループで協議し、結果として講師が教えた以上のアウトプットを目指します。一方、講師は、その問いが適切かどうかというアドバイスとグループごとに出されるアウトプットの評価と全体への視点共有が主な役割となります。

教える側からすると、全体に対して一律に教える場面がほとんどなく、理解度把握や知識定着のばらつきに不安を覚えるかもしれません。一方で探究学習に慣れた世代であれば、むしろ一斉一定一律の研修のほうが非効率と感じやすく、彼らが馴染んだ教育に転換していくことで学習効果が期待できます。

新人教育の目的は、職場への能力的・意識的適応になります。本来、新人の主体性を育むはずの導入教育が、150年前と変わらないスタンスの教育手法によって、逆に彼らの主体性を損なわせてしまうケースがあるとしたら、もったいない話です。

Z世代の次にやってくるα世代や探究世代の新人教育とはどのようなものなのか、従来の教えるという考え方を一旦リセットすることで、探究世代に学ぶ新しい学び方をまさに探究してみてはいかがでしょうか。
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