市進ホールディングス

コラム

column
 
2022.01.06

学級経営の視点を入れた組織づくり

箱根駅伝での青山学院大学の記録的な総合優勝は大学のOBとして素直に嬉しいものです。
私が在籍していた30年前はキャンパスが厚木にあって、近くの高松山を駆け上がる陸上部の
姿を神奈中バスからよく見かけたものでした。

これまでも青学の強さは様々な角度から論じられてきましたが、やはり原監督の組織づくり
は人材育成と絡めて参考になる点が多々あります。

原監督は一昨日の優勝インタビューで選手の「自律」という言葉を強調していました。

「自律した人材」「自律した組織」というのはHRの領域であれば一度は向き合う課題ですが、
原監督のアプローチは人材開発と組織開発の両方のバランスを保ちながら強固なチームに
育て上げてきたように思います。

原監督は部の監督であると同時に大学の教員でもあります。学生との関わり方を意識しながら、
時に指導者として、時に支援者や管理者として、様々に関わり方を変えることで成功に
導いてきたようにも感じます。

一方、企業の管理職の役割を見ても、「部下の育成」と「自部署の組織強化」は
常にテーマになりますが、この部下育成と組織強化を学校教育の「生徒指導」と
「学級経営」に置き換えてみると、管理職が自部署の中で何をすべきかが
イメージしやすくなるかもしれません。

例えば、管理職が自部署の部下をどのように育成すればよいかを考えるときに、
管理職自身を「学級担任」として置き換えてイメージしてみるとよいでしょう。

その中で、例えば担当する35人の生徒の中にどの生徒が不登校の問題を抱えていて、
どの生徒が学級委員にふさわしいかなど、学級担任という位置づけでイメージすることで、
誰に対してどんなケアや声かけが必要かが見えやすくなります。

これを学校教育では、「生徒管理」といいますが、担任が生徒一人ひとりの成長を願い、
強みを見出しながら働きかける姿は、企業内の管理職の部下育成と共通する部分が多々あります。

また、一方で担任が生徒一人ひとりを育成する傍ら、学級を上手く運営していくために
働きかけるアプローチを「学級経営」と言います。

この学級経営は、例えばクラスの中のAグループとBグループの仲が悪いといった状況や、
いじめにあう生徒が出てくる状況などが生じたときに、クラス全体の雰囲気に対して
担任が働きかけるアプローチを言います。

一般的にクラスの雰囲気が明るいや暗いといった言葉はよく聞きますが、明るいクラスの中で
起きている生徒同士が協力しあうという関係性は、自然とできるものではなく、
クラスの担任の継続的な働きかけによって醸成されてくるものです。

特に学級経営が上手な担任は、生徒同士の関係性に常に注意を払い、
何気ない生徒同士の変化に気づき、問題が発生する前に対処しています。

この対処法は、個々の生徒指導だけでなく、クラス全体で話し合うなどの対話が奏功します。
このことは管理職の自部署へのアプローチにも適用可能で、学校の先生がクラスの雰囲気を良くし、
安心安全の場を生徒とともにつくりながら、成長を図っていくあり方と似ています。

学校の先生がおこなっている「生徒指導」と「学級経営」は、企業の管理職が組織の生産性を
高めるための「人材育成」と「組織開発」の関係性に似ており、青学の原監督が大切にしてきた
自律人材の育成・自律組織の構築にも通じていると感じています。
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